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12の匣
2020.9.10 (thu) – 9.22 (tue)
植松永次|土 大室桃生|パートドヴェール 金森正起|金属 紀平佳丈|木工芸
郡司製陶所|陶磁器 新宮州三|木漆芸 素素|和紙漉き / 協力 かみ添|唐紙 都筑晶絵|製本
paisano|革 林みちよ|陶磁器 古い道具 冨永淳|古物 三原佳子|日本刺繍

ハコ。
箱はものを仕舞うという単一の目的を持つ、非常に明快な存在ゆえとても魅力的なものです。
実用道具としての魅力はもちろん、何も入れずとも空(くう)への期待を含む、
どこか夢心地な存在でもあります。
箱には何を仕舞いましょうか。箱の中の美しき基準は全くの自由。
蓋はそのささやかな世界への扉、
開ける、閉める、という行為により、周りの音はすっと閉じられ、
仕舞われていた世界が香りたちます。

今展では、12人のアーティストに思い思いの箱を制作していただきました。
物語のような手箱、美しき紙箱、漆黒の箱、
ものだけではなく、あなたの想像を仕舞う箱もあるかも知れません。

箱は箱ゆえの自由を持つもの。
用を解き放ち、その空なる内を自由に想い描いていただけましたら幸いです。



◉online exhibition
9.16wed.-9.22mon.
artist|online shop よりご覧下さいませ。
ご相談などございましたらお問い合わせくださいませ。

作家在廊日
10日(木) 大室桃生 紀平佳丈 三原佳子
13日(日) 郡司慶子 林みちよ 古い道具
17日(木) 素素
18日(金) 都筑晶絵
閉廊日
9月15日(火)、23日(水)、24(木)

植松永次


夜空に星を数えるとき
白い月光に眠るとき
青い風に草の匂いを嗅ぐとき
植松作品を目の前にし 感じる安堵は それに似ている
静かな高揚と温かな孤独
自然物と自分との隔たりが解け合う 気持ちのよさ

案内状のために届いた作品は 蓋のない箱だった
「開かない箱を送ります 星が入ればいいとおもって」



大室桃生
1992 武蔵野美術大学工芸工業デザイン学部金工科卒業
1992~94 伝統工芸金工作家工房勤務
1995  Surrey Institute of Art (glass course) イギリス
現在東京都在住
個展 グループ展など国内外で作品発表


パートドヴェールという技法は 紀元前に始まったという
粉や粒状の硝子を型に詰め焼くこの鋳造技法は
硝子による細やかな表現を可能にし
優雅で絵画的な美術作品が多く作られてきている
大室作品にはそんな華美さは影を潜め 鼻歌まじりに森を歩くような
どこか朴訥とした気配が漂う
そのためなのか 日頃 彩色や可愛らしさを好まれない方にもファンが多い
大室さんの作品は 特別な存在のようだ
今展の掌ほどの手箱を前では 誰しもが畦道を歩いていた少年少女のような気分で
愉しんでいただけるのではないだろうか



金森正起
1975年 名古屋市生まれ
1999年 大学卒業 東北で生活
2000年 鍛冶屋を巡りはじめる
     いろいろな作り手を訪ねる内に鉄の仕事に出会う
2001年 松岡信夫氏(鉄の造形家)に弟子入りする
2005年 岐阜県恵那市上矢作町で生活
2006年 名古屋市で仕事場を持つ
     建築金物や生活道具などを作り始める
2014年 近くの山の廃墟を手に入れる
2019年 小小をはじめる


金森さんの仕事は 門柱やスイッチなどの建築用品から器 造形作品まで
広い金属の世界を自由に行き来している
へら絞りや琺瑯のような 工業製品加工の世界にある技法を一人試し
アルミや鉄といった 家庭では余り目にすることのない金属素材を
食卓に上がる器や道具へと提案し 驚かせてくれる
ニューウェーブはいつの時も 一人のしごとから始まるのだ
今展では 多彩多様な顔を持つ金森さんが
箱という一つの括りのある森の中を どのように飛んでゆくのか
高く澄む秋空を仰ぎながら 愉しみに待ちたいと思う



紀平佳丈
1982年 愛知県豊田市に生まれる
2006年 愛知県立芸術大学 美術学部 彫刻科 卒業
2006年 山梨県の家具工房で、木工の家具や小物等の製作を行う
2012年 退社後、独立。地元・小原に工房を構える


本人と等しく 物腰の柔らかな作品をつくる
鉋や鑿などの刃物と自身の手を唯一の道具として
刳り 削り 磨いた木肌は 薄化粧を施したかのように 優しく香る肌となっていく
刳りものにて制作する箱は 根気と時間を要し 彫刻としての自由な領域が広いため
挑戦的な仕事の一つであろう
今展では 掌に載る小箱から大作まで 新しい挑戦を愉しんでくれているようだ



郡司慶子
2005年より郡司庸久・郡司慶子の共同作業による仕事をはじめ
今に至る


花と動物 いきものに触れ 戯れ 自身も無垢ないきもののように暮らす郡司慶子さん
近年 ご主人である郡司庸久さんと益子の仲間たちで制作することの歓びを知り
郡司製陶所との名で活動をしている
その中 慶子さんは主に絵付けや彫り 装飾を担っている
そこには花と動物 彼女の愛する戯れの日々が描かれていく
私たち人間は 歌うように産声をあげ 幼子は花から花へ飛び交う蝶を無心で追い
少年は蠢めく虫に玩具のような好奇心を向ける
彼女の装飾には そんな幼子のような純粋さを いつも感じている
何を入れるの?と思ってもらえたら楽しいかなと思って、と
数年間封印していた彫りの仕事を 丸い箱たちに施してくれるそうだ



新宮州三
1973年 兵庫県神戸に生まれる
1996年 京都精華大学 美術学部卒業
1997年 輪島漆芸技術研修所 専修科 卒業
1999年 宇治に移り木工芸家 村山明に師事
2006年 独立
2007年 10月初個展(西麻布桃居)


木は本来荒々しく野生的なものだ
その野生を手懐けるのではなく その姿はそのままに
その野生の中へと歩み入り 敬い 理解し制作する
そんな姿を思い浮かべる
生まれる椀や盆には やはりどこかいきもののような野生が宿る
ただ その中に垣間見る静けさは いきものを扱うが故の丁寧さや謙虚さの反影
今展にて制作して下さる刳りもの仕事と轆轤仕事にも
共に新宮さんの持つ両面が活かされている



素素
1998年 岐阜県にて紙漉きを始める


素素
その名の通り 素素の漉く和紙はある意味素っ気なく
その紙は誰かの何かの素材として 静かに存在したいと考えている
佳き素材を用いて拵えた 澄んだお出汁のような存在なのか
出汁のごとく 清らかな素材と無駄のない地道な仕事からその紙は生まれる
一見素っ気ない素(しろ)き和紙は 実は最高に旨味のある紙なのだと思う
今展では 唐紙 かみ添さんにお力添えをいただき
素素の手漉和紙に手刷にて仕立てられた唐紙による
それは美しい日本の箱が届けられる
出汁がどのような料理となり供されるのか お愉しみあれ



都筑晶絵
2001年にフランスで手製本と出会い、多摩美術大学卒業後、
ドイツ人ブックアーティスト、Veronika Schäpersさんに師事
2007年1月からスイスで再び製本を学び
展覧会のための作品集や特装本のオーダーを受ける傍ら
ブックデザイナー、山元伸子さんと ananas press として活動
2011年より名古屋にアトリエを構え
各地でワークショップを行う


スイスで学んだ製本という技術が綴じるものは 本だけではない
書籍とその本の背景を標本のようにまとめた箱
誰かの文字や美しい展示会の記憶が覗く白いノート
アーティストが溢した仕事の断片を飾る額
彼女は製本家である彼女のやり方で
まっさらな紙にわたしたちの人生の断片を綴る製本家である
箱展では スイスで学んだ箱やいろいろな形の箱 空っぽでない箱もつくるよ

すでにそのメッセージにワクワクしている



paisano
1978年 東京都生まれ
8年間ランドセル製造工場に勤務後独立
2017年 大分県竹田市に移住 atelier galleryを構え活動中
使い込むほどに豊かな表情になる素材に手を添え、カバンや財布などの生活道具を製作


paisano 小河さんの仕事を知ったのは 一枚の案内状の写真
日頃 財布やバッグ 日常の革製品を制作する作り手による
黒々とした四角い箱が写る写真は その後 長くわたしの記憶に留まることになる
ようやく手にしたそれは 植物タンニンによりなめされた黒革の
柔らかな塊のような革箱だった
今展では 手と目と革と相談をしながら 初めてのサイズの箱を制作してくださる
この柔らかな革箱には何を入れましょうか
黒革に包まれたものたちは ソファの上に寛ぐように 安堵して収まるはず



林みちよ
1974年 土による造形を始める
1890年 以後 国内外にて作品を発表
国内のギャラリーや美術館 他 パリ ニューヨーク 台北にて展示
アートフェア東京 アートフェア京都二条城 などにも出展している


林さんの作品に わたしはいつも心がときめく
それは 焼物 という私たちが思い描く世界からは想像することのできない
絵画のような作品
自由で伸びやかで キラキラとした好奇心に溢れ
エレガントとはこんな大人の好奇心が生む 美しい仕業のことを言うのではないかと思う
様々な国へと旅し 見聞きされてきた 愉しくユニークな経験とモノより生まれる手箱
小さな陶器製の箱からは オルゴールのように旅の記憶の断片が溢れてくるようで
開けて見ずにはいられない



古い道具 冨永淳


以前 古い道具の冨永さんから 白い紙風船の束を求めたことがある
白い紙が貼り合わされ畳まれた風船が 儚い三日月のように重なる姿がきれいだった
息を吹き込み遊んでみると 心許な気にゆらゆらと手から離れる
冨永さんが掬う古いものは そんな白い紙風船のようなものが多い
いつか見たようなものなのに そこにあるのは郷愁ではなく
小さな発見とくすりとした微笑み
ゆるゆると力を抜いて あなたにとっての紙の三日月を見つけていただけたら嬉しい



三原佳子
女子美術短期大学にて日本刺繍を専攻
日本刺繍作家 栗田敬子氏に師事、百貨店呉服部の勤務を経て独立
着物作家 丸山正氏の制作に20年以上携わり
伝統的な技法と現代的なセンスが交わる作品世界を広げる
2011年 東京 杉並に、アトリエ兼ショールーム「日本刺繍 露草」を開く
作品はもとより、独特のシックな雰囲気のある着物姿で多くのファンを持つ


美しい方である
銀鼠のきものをお召しになる三原さんご自身が いつも作品のように在ってくださる
きものや日本刺繍という 今や伝統の中に存在する仕事を
色調を抑え 装飾を簡素に 着こなしも含め提示されている
刺繍は素地と合い 仕立てられたきものや帯は 潔く大変美しい
今展では 白や藍 銀や灰の反物を巾着 そして箱に仕立ててくださる
銀鼠の世界は小さな巾着にも宿り それはそれは愛くるしい
きものをお召しになる方も いつかの憧れの方も この小さな銀鼠をお手許に


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