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記憶のモンプチ
中西なちお|トラネコボンボン
2021.12.11 (sat) – 12.26 (sun)

記憶のモンプチ

それは、中西なちおという一人の女性が、茶色いトラ猫の衣を纏い繰り広げる、 愉快で素敵なたったひとつの世界。この世界の管理猫である茶色いトラ猫は、 お友達を励ますため、あの日を覚えているため、たくさんの動物たちと毎日 奮闘している。


「 3.11の地震が起きた時、わたしは東京に居ました。テレビのない生活で、 夜まで地震の被害の大きさを知りませんでした。夜になってインタ―ネットで 原子力発電所の屋根が吹き飛んだ映像を見てメルトダウンした、と判断した 夫と避難しました。避難先から友人の安否を確認し避難を受け入れたり 援助することを始めました。毎日避難できない人々の不安や悲しみのことと 放射能汚染のことを考えてなにができるのか自問自答の日々、でも体も心も ショックで固まっていました。そんな中、友人一人は「避難しない ここに居て、 することがある。」とすぐに行動をしていました。友人は音楽家なのですが、 すぐにライブを配信しました。映像で見た友人は震災から2週間もたたない間に 痩せ細っていました。友人の演奏は、まるで先の見えない真っ暗な道を照らす 光でした。降り注ぐ慈愛の雨のように、固った体とゆれる心にしみ込む音でした。 「ここに居て演奏しているから安心して、みんなができることをしていこう。」と 言っているようでした。

私はこの震災のショックで生まれて初めて、人はすべて縁がつながっていて、 遠く離れたあったこともない誰かの悲しみも、私に関係ないことではない、 ということを知りました。誰かの苦しみは私の片割れであると思いました。

私には何ができるんだろうと思いながら骨身を削って活動を続ける友人に物資を 届けようか聞いたら「何もいらない、毎日一枚、動物の絵を描いて欲しい」と言 われました。

あの時みんなに本当に必要だったのはごはんや乾電池だけではありませんでした。 みんな不安で眠れず、情報に翻弄され、心身が疲弊していました。

毎日一枚の絵は本の中から挿絵を選ぶように書いています。悲しみに少しでも 優しい時間を贈りたいと思いながら不安な気持ちにすこしの勇気がでるように 毎日の一枚に託しています。それは私の祈りのかたちです。

中西なちお(記憶のモンプチ初展覧会寄稿文)




中西なちお|トラネコボンボン
2007年よりトラネコボンボン主宰 OBO Mansion キッチン+イラスト担当
料理本「トラネコボンボンのお弁当」「トラネコボンボンのおもてなし」出版
絵本「あるところの猫」「猫とサーカス」など4冊の絵本を出版
全国、美味しいものと絵を携え跳び回っている

2008年「夏至の夏至の日の食事会」
2014年絵本「猫とサーカス」出版記念展
2017年「記憶のモンプチ」展

作家在廊日 12月11日(土)12日(日)
閉廊日 12月14日(火)21日(火)27日(火)-31日(土)




2021年という年があと少しで終わろうとしている。台風が避けて通るはずの 山国長野での大規模な台風被害、一度も降雪のないこの街の冬、 そして見渡せば世界規模のパンデミック。2011年からの10年。 堰を切ったかように、地球が秘めていた力を表層へと溢れ出しているようだ。

中西なちおは何処にいても絵を描く。自宅から、旅先から、海外のホテルから、 10年間毎日その絵を投稿し続けている。本人は走り書きのようなもの、 といつも笑い飛ばし謙遜するが、この絵の中では、 動物たちの毎日は幸いである。

私たちは、どこにいても想像することができる。極地のいきものの今、 海の向こうの人々の自由、隣人の過ごす夜。生きているということはそれだけで尊い。 この三千枚を超えた動物の日常絵が、誰かへの佳き伝染となるだろうか。 記憶のモンプチの10年、そしてこの一年の締め括りを、多くの皆さまと 分かち合えましたら嬉しく思います。

今展では、2018年6月から2021年12月までの三年間の原画を中心に、 2011年3月からの10年間の原画を展示販売致します。

 トラネコボンボンによる菓子 書籍 グッズなども合わせて販売致します。
オンラインでの販売を予定しております。( geshi HP「artist」より)詳細は
sns等でご案内いたします。

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