geshi info exhibitions artist news

instagram

facebook

geshi

back (index of past exhibition) < >

写額漆 28 sei
高木由利子|写真
モリヤコウジ|額縁
宮下智吉|漆芸
2023.9.9 (sat) – 9.25 (mon)

写真家高木由利子、額縁 モリヤコウジ、漆芸 宮下智吉。
今展は三者によるセッションの記録である。

高木由利子による写真集「sei」はフランスの出版社Editions
Xavier Barralより刊行。クローズアップされた28の植物が収
録されている。高木はその写真集に同じく28の言葉 “sei” を
記した。
生 性 静 誓 醒・・・星星が像を結び星座になるように写真と
言葉が瞬き合う。

「sei」が今展のためのアルバムタイトルだ。
高木の手により写真は姿新たにメンバーに手渡され、額装も
また等しく手渡される。まるで演奏のように掛け合い触発し
合い、一曲一曲を制作していく。となると曲目も多様だ。時
にはエレガントに、時にはユニークに。
窓景のような作品から穴を覗き込む程の作品まで、写真とい
う媒体が額装という仕掛けを通し、我々の視聴覚をどのよう
に愉しませ、どう心臓を揺さぶってくれるのか。
さながら夏至はクラブハウス。空間との共鳴を一音一音確か
めつつ場は設られる。
ステージは整った。さあ、あなたもこのライブセッションに
ご参加を!






高木由利子
東京生まれ。武蔵野美術大学にてグラフィックデサイン、イ
ギリスのTrent Polytechnic にてファションデザインを
学んだ後、フリーランスデザイナーとしてヨーロッパで活躍。
以後、写真家として独自の視点から衣服や人体を通して「人
の存在」を撮り続ける。近年では、宇宙の多様性に眼差しを
向け、自然現象に潜むメッセージをカメラのメカニズムを通
し受信するプロジェクト「chaoscosmos]、音x映像xAI の
セッション「AYATORI」などに挑んでいる。

<プロジェクト>
2022 chaoscosmos vol.1 -icing process-
   於 GYRE GALLERY
2023 クリスチャン・ディオール 夢のクチュリエ展
   於 東京現代美術館 日本展開催のカタログ及び会場
   の為、オートクチュールのアーカイブを撮り下ろす
2023 PARALLEL WORLD
   於 二条城二の丸御殿台所・御清所
   KYOTOGRAPHYメインプログラム
2024 chaoscosmos vol.2 於 GYRE GALLERY予定







今展では高木の写真をモリヤ、宮下、又は両者が額装をし、一つの作品として
発表するという新たな試みに挑戦している。
写真もデジタルではなく暗室で印画。オリジナルプリントを含め、全て今展の
ために用意された。
素材、そしてキャリアも全く異なる三者による作品制作。
二年に及ぶそのセッションはなかなか面白いものだったようだ。

夏の一日。宮下氏の手製の昼食を皆で囲んだ後、これまでの経緯、セッション
の様子などを伺いました。



夏至|これまでも(高木)由利子さんは、お二人に額装を依頼し、作品を発表、
写真展を開催されてきたかと思います。ただ今までは写真が主役であり、額は
その背景として存在していました。
今展では、何故三人が同じプラットホームで制作し発表しよう、と思われたの
でしょうか。
高木|そもそも今、写真というものがデジタル化してきて、写真=データとい
うイメージがあって、、写真がモノとして、プリントとして存在するというこ
とを、もしかしたら若い人たちは知らないくらい?
その存在価値が薄らいできている中で、私は写真は”モノ”だと思っている。そ
のモノをどう見せるかということを、長い間ずっと試行錯誤してきていたの。
ひとつ額装をとってみても、絵画だと色々な方法でフレーミング、見せ方があ
るのだけど、写真は一通りで、シンプルでクラシカルな方法しか見受けなかっ
た。何かもっと面白い方法をすることで、よりその写真/プリントというもの
が愛おしい存在になり、人々が見るときに、写真だけじゃなく全体、ひとつの
作品としてアートフォームとして受け入れたらいいなと思っていて。
そんな試行錯誤がベースにあって、最初にモリヤさんを紹介して頂いた、その
時から相談していて、ずーっと実験していたんですよ。
ずっと実験中なのね。今もね。
モリヤ|そうなんです。
夏至 |ずーっと続いているんですね、実験が。

高木|やっぱりやってみないと分からなくて 写真ってフラットでしょ。
テクスチャーがあるけど余りにもデリケートで。だから色んなテクスチャーが
合わないのではないか、負けてしまうのではないかという懸念がある中、やり
方でそれも色々出来るのではないか。
写真と額の距離とか、写真の周りに白があるとか無いとか、とても微妙なこと。
ちょとしたことで全てが変わるので、それはやってみないと分からない。ずっ
と実験で、実験に引きずり込んでいます。でも面白がっても下さっていると信
じています。
モリヤ|そこは意見の言い合いができる。一方通行で頼まれるのではなくて、
ここはこうしたら面白くなるかなとか。
高木|全然。すごいキャッチボール。
モリヤ|そうキャッチボールで。実際作ってみて、あれやっぱりここはもうち
ょっとこうした方が…またその時は。その連続ですよね。
高木|そう。キャッチボールが出来るっていうのは、クリエイティブな事柄で、
一番面白いところなので、それが合う感覚の人でないと大変なのだけれど、分
かってもらえるね。お互いに。だからいいなと。

夏至|漆という素材、そして宮下さんとはどのように出逢われたのでしょうか。
高木|実はあるアーティストの方の額縁が好きで好きで。でもその方はオーダー
を受けておられなくて「漆の作家も良いのでは。額縁の表層を作る素材として
漆も」と仰ったの。それで漆か!と。
ヨーガンレールさんが宮下さん(当時は都内在住)を紹介して下さって。まだ
東京にいると思って連絡したら「今長野に移住中です」って。ワォって思って。
私は群馬(北軽井沢)ですけどみんな長野だと思って。それでバンドが組める
ことになりました。
参考:モリヤコウジ 長野市。高木のリトグラフを手掛ける名摺師 梅田明雄は
長野県千曲市 @umeda_lithograph_studio
高木|ただ、これをやる前から、そうね「写真を封じ込めたい」という願望が
あって。(宮下)智吉に、なんか古い壁をこう磨いていたら(壁を擦りながら)
下からこう出てきちゃったみたいな感じが欲しいと。そんな訳の分からない事
を投げかけたら、普段すごーくキレイなものを作っている方が、結構ワイルド
にやってきたわけ。
夏至|額(今展作品の一つ)ワイルドでしたものね。
高木|箱で(今展作品の一つ)もっと、相当ワイルドにきたので一目でおぉっ
と。それで彼(宮下)ともずーっと実験しているの、実験中なの今回も。

夏至|バンドメンバーが決まり一番最初、まだ何もない状態から、どのような
事を手掛かりに初めていかれたのですか。
高木|最初、、「sei」で行こうって決めて。普通だったらこの写真にこうい
う額装を作って下さいと言うけれど、そういうこともあるけれど、幾つか写真
をお渡しして好きなように作ってみて下さい、という感じ。それぞれがどう作
りたいか。
夏至|では、最初は指示なく。
高木|自由演技。自由演技から始まったの。
モ宮|あー、一番最初はそうですね。
高木|始まったら、実は僕はここまでやったけれど額装は苦手だからって彼
(宮下)が彼(モリヤ)に。漆を塗ったものを(宮下が)彼(モリヤ)に渡し
たり。彼(モリヤ)が箱を作ったものを彼(宮下)に、これはもしかしたら漆
の方がいいんじゃないって渡したり。ここもキャッチボールがあって。
夏至|漆を塗装した板の状態で、モリヤさんに渡されたものもあるという事で
すか?
モリヤ|それで最終的に仕上げは僕がやるのもあるし。
高木|ケースバイケースね。
モリヤ|ガラス入れたり。
高木|穴開けたり。
モリヤ|僕が枠作って渡して、それからまた戻ってきて仕上げたこともある。
高木|それが面白くて。この二人が何の問題もなくやりとりしていて、ここま
で作ったのだけど、後よく分からないからって。なんかこう、男のエゴみたい
なものが全く、その闘いが二人の間にはないね。
夏至|それはお二人のとても良いところかも知れませんね。
宮下|(笑顔で頷く)
高木|全然、全くないの。三人で話し合えるし、私の写真も「こっちがいいん
じゃない」とか言うし。
もうみんなねフラットホーム。On the same flat home!
僕はこれが合うと思うとか、作ってくれたものに対してこれがすごい合うと思
うとか。 なにかね、私すごく奇跡的だと思ってる。
なかなかそうは行かないです。
夏至|そうでしたか。では奇跡のバンドですね。
高木|いや奇跡ですよ。本当に奇跡。実は私は本当にそう思っていて、、そう
はいかない。
モリヤ|高木さんってシンボルっていうかね。高木さんの写真があって、それ
に向けてゴール地点が一緒っていうか、向かう所が一緒っていうか。
夏至|本当にバンドのやり方と考え方。
高木|バンドって普通すごく揉めて解散する。
モリヤ|一回ね、揉めたふりして解散しようかって。夏至さんをちょっと、、
(笑)
高木|なさ過ぎてね、問題が。でもやっぱりそれぞれにリスペクトしてるから、
それが一番で。餅屋は餅屋に対してのリスペクトがあるから。何だかその、楽
しみなわけですよ。何作ってくるんだろうかって。また見たときにちょっとま
た変化していたりして、おぅこう来るかみたいな。そのサプライズがお互いに
楽しいよね。

夏至|宮下さんのお声を。作家やアーティストは基本一人で作業していらっしゃ
いますね。また私たちが日頃いる工芸界では、例えばこの蓋を作って欲しい、
というような共作はあるかと思います。今展のように、皆がフラットホームに
いる、そういう共同作業はなかなか私たちの世界では経験しない出来事のよう
に感じます。
高木|どこにもあんまりないと思います。
宮下|面白そうだなと思ってやり始めたのがあって。
夏至|宮下さんはババグーリさんの展示でも額装のお手伝いをされていますね。
宮下|はい、そこから始まって。例えば大きなパネルのもの(出展作品)も元
々あの大きさで作ろうと思った訳ではなくて、テストピースが小さいと分から
ないから、大きく作って合うところで切ればいいって発想で大きく作って来て
いて。最初はもっとで大きかったんですよ。
高木|真ん中じゃない方がいいねって。
宮下|しかもそれも途中の段階で持っていって二人がいいじゃんって言って。
それでその状態で完成になったのです。
高木|二人で盛り上がっちゃった。
夏至|本当に意図してないところへの着地が沢山あるのですね。
高木|そうね。オープンなんです。だからこういうフィニッシュニングにしな
くちゃいけないっていうのがない。あれがないんだよね、到着地点。だから自
由。自由演技。
宮下|うんうん。
高木|お互いに意見も言えちゃうの。
夏至|お話を伺っていてそう思いました。由利子さんという指揮官が居られて、
もうちょっとこうしましょって、何かしら指揮があるのかなと思っていました
けど、全くそうではなくて。由利子さんご自身もどんどん変化されているし、
ではこうしましょ、と現場で決めていくことが相当多いんだ、と分かりました。
宮下|確かに。
夏至|これは面白いなって思いました。
高木|だから大変って言えば大変。全部ファジーなまま動いているから。
モリヤ|今の時点でやっぱポストカードサイズがいいねって。作品が変わっち
ゃいましたからね。
宮下|僕が作るものにしてもそれが面白くて。工芸だとどうしても完成がなん
となくあって。そこで途中の段階で終わるっていうのは、途中になっちゃうん
ですけど。でもそういう世界じゃないところ、自分がそこをじゃあ器でやるか
と言えばそれは違う話しなんですけど。綺麗だなと途中の段階で気づいても止
められないじゃないですか、その段階では。でも二人はそこで止められるから、
結構面白い。あぁこういう発見?ってあるんだなと。
高木|私たちは無責任なんだよね。
モリヤ|(作品の)裏がいいじゃんとか。
宮下|それはそれで面白くて。綺麗なものを知ってても途中の段階で止めれず
に最後までやっちゃいがちなんですけど。
高木|あーそっか。あのシルバー(銀箔を施した額縁)もね、、
シルバーも本当は載せる予定だったんですよ。
夏至|載せるとは?
高木|銀箔の上にまた白漆を…
宮下|白を載せて白漆を。
高木|「載せるんですけどって」この間持ってきた時に(銀箔の状態が)、き
れーい!載せるの?って。
夏至|途中のものが採用されているんですね。
宮下|そうですね。
高木|途中が見られるってラッキー。やってしまっていたら分からないもの。
もちろんフュニッシュしたものも格好いいけど、中って結構格好いいの。
高木|写真も絵も生かすも殺すも額によるの。だからすっごい重要なんですけ
ど、そこまで人が重要視してないというか気がついてないというか、額の重要
さに。だからそこに人が気付くと良いなと思って。なんかそれありきなんです
よホントに。
夏至|確かに。
高木|ペラっと壁に写真飾るのとね、全く違うことになるわけだから。額の力
は大きいし殺すこともできるんですよ。だからホントに重要。せっかく素晴ら
しい絵や写真でも、額ひとつであちゃーってなる。





作家在廊日 高木 9月9日(土)10日(日)16日(土)17日(日)
         23日(土) *全日13時から
      モリヤ 9月9日(土)25日(月)
      宮下 9月9日(土)10日(日)24日(日)
閉廊日 火曜 9月6日(水)-8日(金) 27日(水)























モリヤコウジ
1974 長野市生まれ
1998 ニューヨークでアート作家活動とフレームショップ
   でアルバイトを行う
2010 長野市にオーダーメイド額縁屋兼ギャラリー
   「FLATFILE」を開業
2015 FLATFILESLASHに場所を移す



宮下智吉
1979 長野県岡谷市生まれ
2006 東京芸術大学 漆芸専攻 卒業
2008 同大学院 修了
2009 同大学院 研究生 修了
2020 長野県松本市に工房を構える























夏至|今回拝見していて 日本的な空間にもとても合う額装になりましたね。
それはイメージとしてあったのでしょうか。
高木|ないよね。結果的ですよね。
夏至|結果的にどんな空間でも。こういう宮下邸のような日本家屋に。床の間
とか土壁とか。
高木|すごい合いますよね。
夏至|はい、とても合うなと思いました。それはちょっと意外な嬉しい発見で
した。
高木|それ自体に向かってはいなかったけれど、私の中では御茶席の床の間に
飾れたら良いなと思っていたし、何処にでも置けるもの。壁があって、普通に
壁があって。よく飾るところが家にはないんだとかみんな仰るのだけど。でも
机の上にも置けて、立て掛けることもできて、仕舞うこともできて。箱がある
から、壁がなくても写真は所有できる。喜びっていうのは他の方法でもあるよ
っていう。
モリヤ|アパートの人は壁に穴をあけられないとか。
高木|だからそうそう。そういう方はちっちゃいもの置けばいいし、立て掛け
るのも格好いいし。
夏至|日本人はずっと土と竹の家に住んできたので、壁に何かを飾る習慣が少
ないのだと思います。
高木|床の間だけですね。
夏至|写真も含めて、壁にものを飾るということへの苦手意識が、無意識下に
あるのかなと思います。だから今展では、掛けることもできるけど置くことも
できて、覗いたり、色々な仕掛けがあるというのは、私もとても素敵だと思い
ます。
モリヤ|それは夏至さんでって決まってから、また方向が少し変わりましたよ
ね。あれがもし最初に、ホワイトキューブのギャラリーでってなってたら。そ
うだったら全然違うものになってたと思うんですよね。
高木|やっぱり、小さいものを所有する喜びというのが、写真はあまりなかっ
たと思うんです、最近。昔はあったと思うのですけど。
夏至|確かに。今写真というものがあまりに気軽なものに。
高木|データでぴっと出力もできて、だからその愛おしさを強調する。なんて
言うのかな、道具じゃないけど…なんて言えばいいのかな?
モリヤ|今、出力さえしないですからね。スマホ画面で見るだけで。
夏至|情報と記録。
高木|やっぱりものとして、あくまでも”もの”として愛おしいもので本来ある
ので、それをちょっとまたみんなが気がついてくれたらいいなと思って。所有
すると多分ね愛おしくなりますよ!
夏至|本当に!
高木|所有してみないと分からない!本当にそうだと思いません?
夏至|思います。どんなものでも、器ひとつでも、やはり一緒に暮らしてみな
いと分からない。美術館で鑑賞する良さももちろんあって、とても好きな行為
です。でも、やはり触ったり、生活の中に映る景色の中にあるということは、
全く異なる体験だと感じます。 夏至|今回、由利子さんがオリジナルプリントを出展して下さったことは、私
たちにとって大きな出来事でした。
高木|やっぱりその “もの”として愛おしいところに全部繋がっていて。オリ
ジナルプリントでなければ絶対にあり得ない”もの感”本来写真の力とかがそこ
に封じ込めれらているので、それをしないと形だけの展示になっちゃうかなと
思って。
夏至|これまで、ファッションと人体というものを主題に表現されてきました。
その中、今展での「sei」のように、近年は自然物や自然現象を撮ることが増
えておられますね。作品、氷結過程での水が凍って行く過程や、花の蕾の様な
ど、特に私たちは長野に暮らしていますので、幼少期より目にしていると思い
ます。しかし、由利子さんの写真に写る世界は、全く未知の景色でした。
写真家としての視点とカメラのメカニズムを通すことで、肉眼では捉えきれな
い。全く知らない世界を私たちは見ることが出来るのだ、と今改めて感じてい
ます。
高木|はい。目に、いわゆる目に見えるもの、例えばコップがこう見えて、こ
れを撮るっていうことも写真ですし “真実を写す”と書くので、そこにある物
を写し撮るというのが基本なんですけど、seiの場合も実際、普通はあんまり
見えない状況なんです。
あれ全部剥いてるんです。植物のヌードなんです。なので、普通は剥かないで
すね。だからあれはちょっと罪悪感があって、ぎゅーーーっとなってるものを
皮を剥くとそのエネルギーがぐーっと凝縮されて中にあって。で自分を守るた
めにとてもフェアリーでウェットなんですよ。すごい官能的なの。でそれは実
際は普通は見えない。あと、氷結過程もあれは普通じゃ見えないんですよ。
夏至|そうなんですね。
高木|見ようと思えば見えますけど、氷を凍らせますよね、水を入れて。で、
例えばこれ位深いと一夜では凍らないんですね。で、これを出そうと思ってあ
る日氷を床暖に置いてちょっと溶かして、溶かしたらジャーって水が出たんで
すよ。中も全く凍っていなくて、周りだけ底だけ凍っていたんですよ。それで
失望して、何だ凍ってなかったんだと思ってその場を去ろうと思ったら結晶が
できてた訳なんですけど、結晶って雲母よりも薄い透明なので、透明な水に結
晶が入っていても見えない。(現象は)起きているんだけど見えない。水が出
たことで空気が触れて、私が見る角度で光が当たって見えたんですよ。あれい
っけん見えないですよ普通。透明in透明。
夏至|なるほど。それが。
高木|おー、こんなことになってるんだ!と思って。それからはまり出してい
ろんな形のもの厚さのもの、条件変えたりとか丸いものとか作って、4年位や
ってます。
夏至|過程なんですね。
高木|ほんとの過程です。あとなんか状況によっては、全部が氷、かき氷みた
いに中がガサガサになって固まっている時もある。全然物理的には分からない
んですけど、物理学者と数学博士に見せたら彼らの感想がすごい面白くて、す
っごくcomfortableだって言うわけ。自然なんだって彼らにとって あの景色
が。その多様性っていうのがホントに自然の全てで「その多様性が気持ちいい」
とかって仰って、全然違う観点。混じり合ってるから宇宙なの。気持ちいいの。
私たちの体もそうだし、だそうです。そういうことって案外気が付かないんで
す、日常だと。

夏至|由利子さんが北軽井沢に移住され、宮下さんが長野に戻られるタイミン
グで出会われ、色々な事が巡りめぐって長野という土地で展示させて頂ける。
本当に幸いなことで 嬉しく思っています。
高木|こちらこそです。
夏至|写真がデジタルになって、そのデジタルの写真をどのように見せようか
考えている、と仰っていました。混沌と考えていらっしゃる中、その表現のひ
とつとして三人で展示を、と。
高木|そうです。なのに、今回はデジタルじゃないっていうのがまた面白い。
夏至|驚きました。すごい!と。
高木|本当に一個ずつ手作りなので、写真も本物って言ったらおかしいけど、
じゃなくちゃ勿体ないなと思ったんです。
夏至|先程のお話、着地点がどこにいくか分からない、、本当にセッションな
のだと感じました。この二年間、三人はこんなことをして下さっていたのだっ
て。

夏至|では皆さん最後に。今展は先程のお話のように、一般的ないわゆる写真
展というものとは異なる展覧会になると思います。その中で、どのように写真
を見て頂けたら嬉しい等、今展に向けたお気持ちやメッセージはありますか。
モリヤ|夏至での展示会が決まった後に、由利子さんがディオール展やられた
り、京都二条城やったり、どんどんね、すごいことになって。
夏至|素晴らしさが、その存在の凄さが、更に広く世に知らされましたね。
モリヤ|そうそう。だから僕ら、今回は高木由利子写真展。僕らプラスかなぁ
って感じでいったら、いや今回は違う、三人展だって。
高木|それもなんかね。三人展とも言いたくなくて。三人展とも違うじゃない。
だから、セッションなんだけど。人は分からないよね、意味がね。でも何か、
それこそ何かが主役で、この脇役とか、バックステージとかってこと世の中に
たくさんあるじゃないですか。でも実際、主役じゃない部分ってすごく重要で、
なかなかフォーカスされなかったりするでしょ。
リトグラフなんかも普通なかなかフォーカスされないんですけど、私、彼(摺
師梅田さん)の部屋をこの間作ったんですよね。脳内過程。結構すごい人が急
にリトに対して興味持って、知ることにもなったし。そういう、何て言うのか
な、ほんとは何が主役とかないんだけれど、世の中のシステムがそうなってい
るから。そこがフラットになったらいいなと思ってて。
今回のことに限らずジェンダレスだったりタイムレスだったり、それから私が
一番好きじゃないのが、ジャンル分けするっていうか、これは現代アートだけ
どとか、これな写真だけど現代アートではないとか、現代アートだけどこれは
何とかじゃないとか。どうでもいいですホントは。
工芸もそうすごくそうで、お茶碗作ったら工芸で、何か壁に掛けるもの作った
ら急にコンテンポラリーアートになってゼロがひとつ増えるとかあるじゃない
ですか。そういう境界線、ジャンル分けに対していつも疑問があって。何か、
もっと全てが必要だしお互いに。そのメッセージでもあるんです、今回。
でも何か、物作りの根本に戻ったような気がする。本来みんな正直に意見言い
合って、それぞれの持ち味を生かして、それを一つのものに作り上げるってい
う工程ってすごくクリエイティブじゃないですか。それがいい意味で何の摩擦
もなく出来たっていうのがホント奇跡だなって。
夏至|そうですね。確かに職人の世界や舞台や映画など、元々チームでしか作
れない世界はありますが、工芸家やアーティストは日頃は孤独。一人で完結し
ていく世界ですので、だれかと一緒にものづくりする経験、なかなかこのよう
な機会は、敢えて作らないと無いですよね。あってもなかなかこのような関係
での創作は、余り聞いたことがない気がします。
高木|レアだと思います。で、そうは出来ないと思う。逆に相当難しい。
モリヤ|しかもこのキャリアの差ですよ。でも、写真、由利子さんの写真が好
きなんですよ。それが全てです。
高木|梅田さんに感謝ね。繫がりに感謝よ。
夏至|色々な繋がりに感謝です。

一同|今展をどうぞ宜しくお願いします!

© geshi